「また叩いちゃった…」と落ち込む前に
たとえば、公園で遊んでいて順番を待てずにお友達を押してしまった。
思い通りにいかず、おもちゃを投げてしまった。
叱ったけど、子どもも泣いてしまって、親の自分も落ち込んでしまった——。
そんな経験、ありませんか?
つい「また手が出た」「どうしてわかってくれないの…」と感じてしまうかもしれません。でも、そこでひと呼吸。
「手が出る=乱暴」ではなく、“衝動をコントロールする力がまだ育っていない状態”と捉えてみると、見える景色が少し変わってきます。
この記事では、作業療法士のパパである私が、「手が出てしまう子」が外遊びの中で気持ちを整え、関係性を少しずつ育んでいく方法についてお伝えします。
“手が出る”行動の奥にあるもの
子どもが叩いたり押したりする時、それは単に「乱暴になった」のではありません。
その行動の背景には、次のような“つまずき”が隠れていることが多いのです。
- 感覚の過敏や鈍さ:刺激に敏感すぎてパニックになったり、逆に鈍くて力加減がわからなかったりする
- 言葉で気持ちを伝えるのが苦手:まだ「どうしたいか」を言葉にできず、行動で伝えようとする
- 衝動性が高い:思いついたらすぐ動いてしまう。頭で考える前に体が動く
- 予測できない状況に弱い:周囲の動きが読めず、不安になって過剰に反応してしまう
だからこそ、「叩いた」という“結果”だけを見るのではなく、その前に何があったのかに目を向けることが大切です。
外遊びで育てる“衝動コントロール”の土台
では、どう関わっていけばいいのでしょう?
その一つの答えが、「外遊び」にあります。
外遊びには、体を動かして発散するだけでなく、次のような力を育むチャンスが詰まっています。
- 感情のクールダウン(リセット)
- 順番を守る、交代するなどの社会的ルール
- 成功体験による自信と自己肯定感
- 自然に触れながら感覚を整える時間
怒りや不安を“言葉”ではなく“体で整える”ことができるのが、外遊びの魅力です。
気持ちと体を整える外遊び5選
――作業療法士パパがすすめる、心の土台を育てるあそび
1.思いっきり体を動かすあそび(坂道のぼり・かけっこ・ジャンプ)
「走りたい!」「登りたい!」「跳びたい!」
そんな衝動を思いきり出せる環境は、子どもにとって“感情を外に出す安全な出口”になります。
特に、坂道や階段をのぼるときには全身の筋力とバランス感覚が使われ、達成感も得やすいです。かけっこやジャンプも、自分の力を「出し切る」感覚を味わうには最適。
体をたっぷり動かすことで、エネルギーの行き場ができ、感情も自然に落ち着きやすくなります。
育つ力:衝動の発散・自己調整・情緒の安定
📌 親の関わりポイント
「すごいジャンプだね!」「全力で走ったね!」と“出しきったこと”を認める声かけが、心の満足感につながります。
2.順番を待つあそび(すべり台・ブランコ・シーソーなど)
順番が必要な遊具では、「待つ → 自分の番 → また待つ」というリズムが自然に体験できます。
衝動性の高い子にとっては難しい経験ですが、遊びの中なら「楽しいから頑張れる」気持ちが働きやすいのです。
見通しが立たないと不安になりやすい子には、「あと2人で○○くんの番だよ」と、“今ここ”と“その先”をつなぐ声かけが有効です。
育つ力:順番認知・予測力・自己コントロール
📌 親の関わりポイント
「待てたね、えらいね」とタイミングよくフィードバックしてあげることで、“我慢できた”経験が自信になります。
3.一緒に作るあそび(砂場・石並べ・水路づくり)
ひとりで完結する遊びも大切ですが、誰かと一緒に「なにかを作る」遊びには、協力・調整・譲り合いの要素が自然に含まれます。
「トンネルこっちに繋げていい?」「これ運ぶね」など、言葉が少ない子でも非言語的なやりとりがたくさん生まれます。
もしトラブルになりそうな場面があっても、大人が「一緒に橋つくってみようか」と“第三の目的”を示してあげると、対立ではなく共創へと流れを変えられます。
育つ力:協調性・非言語コミュニケーション・達成感の共有
📌 親の関わりポイント
成功したときは「一緒にできたね!」と“協力したこと自体”を褒めると、次の関わりへの意欲が高まります。
4.感覚を整えるあそび(シャボン玉・葉っぱ集め・小石探し)
強い刺激ではなく、“心地よい感覚刺激”に触れられるあそびは、感覚が過敏だったり、逆に鈍い子にとってとても大切です。
風に揺れるシャボン玉、葉っぱのサラサラ感、小石の手触り…。
「触って」「見て」「感じる」ことを通じて、過敏さが和らいだり、気持ちがクールダウンしたりします。
とくに、気持ちが高ぶってしまった後の“クールゾーン”として、こういった遊びの時間を取り入れるのは効果的です。
育つ力:感覚の安定・注意の切り替え・安心感
📌 親の関わりポイント
「この葉っぱ、やわらかいね」「石ころ、冷たくて気持ちいいね」など、一緒に感覚を楽しむことで、安心の共有が生まれます。
5.ごっこ遊び(ヒーロー・お店屋さん・消防士など)
「ぼく、ヒーローになるね!」
「いらっしゃいませ〜!」
こうしたごっこ遊びは、感情を外に出す練習になったり、人とのやりとりを“自分のルールで”体験できる貴重な時間です。
実際の場面では難しい言い方でも、役になりきることでスムーズに言えることがあります。
たとえば、「やめて」が言えない子が、ごっこ遊びでは「悪いことはやめろ〜!」と伝えられる…そんなこともあるのです。
育つ力:感情の整理・他者視点・行動の意味づけ
📌 親の関わりポイント
「店員さん、ありがとう!」「消防士さん、助けてくれて嬉しかったよ」など、役になりきった行動を肯定的に返すことで、自分の存在が他者にどう影響するかを学ぶ機会になります。
叱るより“気づかせる”声かけを
つい「叩いちゃダメでしょ!」「またやったの?」と言いたくなる気持ち、ありますよね。
でも、そんな時こそ、こんな声かけに変えてみませんか?
- 「どうしたかったのかな?」
- 「○○って言えたらよかったね」
- 「こういうとき、どう伝えればよかったと思う?」
“ダメ”を伝えるだけではなく、“どうしたらよかったか”を一緒に考える時間が、次への学びに変わります。
おわりに|“ことば以前”のやりとりを育てる時間に
「我慢しなさい」「ちゃんと伝えなさい」——。
そう言いたくなる場面もあるかもしれません。
でも、子どもにとってそれは、まだとても難しいこと。
だからこそ、
- 安心できる関係の中で
- 自分のペースで遊びながら
- 「できた!」「わかった!」の経験を積むこと
このプロセスが、「ことば以前」のやりとりを育ててくれます。
外遊びは、叱る前に、関わるきっかけをくれる時間。
子どもの“伝える力”を、ゆっくり育てていきませんか?
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