
こんな方におすすめの記事です
- 子どもがお風呂に入るのを毎日イヤがって困っている
- シャワー音や顔に水がかかるのを極端に嫌がる
- 発達特性(感覚過敏・こだわりなど)のある子への接し方に悩んでいる
- 「いつ終わるの?」と毎回聞かれて、うまく進まない
- 子どもが安心してお風呂に入れるように工夫したい
- 入浴前後のバトルを減らし、親子で穏やかに過ごしたい
はじめに|毎日のお風呂で、ついイライラしてしまうあなたへ
「今日もまた“お風呂イヤ!”って泣かれて、心が折れそう……」
そんなふうに思ったこと、ありませんか?
子どもがお風呂を嫌がる理由は、単なる“わがまま”ではありません。
そこには、感覚や不安、過去の経験など、目に見えない背景が隠れていることも。
作業療法士として、そして一人の親として見えてきた「入りたくなる」支援の視点と、
家庭で今日からできる工夫を、やさしく丁寧に解説します。
子どもが「お風呂を嫌がる」5つの理由と背景
感覚過敏|お湯・音・触感が“痛い”になる子もいる
- シャワーの音が爆音のように聞こえる
- お湯が熱すぎて、刺激が“痛み”になる
- 石けんのぬるぬる感が気持ち悪い
このような感覚の困りごとは、発達特性がある子どもに多く見られます。特に「音」「温度」「触感」に対して過敏な場合、“イヤ”は実は“痛み”や“恐怖”に近い感覚です。
具体例・対応策
- シャワー音が怖い子には:シャワーを使わずに、湯おけで静かにかけ湯。お湯を手でそっとすくって、子どもが見てわかる範囲でかける。
- ぬるぬるが苦手な子には:泡立てネットで泡状にしてから使う、または固形石けんに変えることで感触が軽減されることも。
実例:4歳のAくんは、毎回シャワーで大泣きしていましたが、洗面器で「お湯をかけるのは自分でね」と任せるようにすると、1週間で入浴がスムーズに。
切り替えが苦手|遊び→お風呂が“イヤ”になる心理
遊びやテレビに夢中になっているときに突然「お風呂行くよ」と言われると、子どもは急な切り替えに対応できず、イヤという感情が爆発します。
具体例・対応策
- 5分前に予告:「あと5分でお風呂だよ」と伝え、心の準備時間をつくる。
- 見通しの工夫:キッチンタイマーや砂時計を使って、視覚的に時間の流れを見せる。
- 儀式化する:「お風呂前はこの歌を聴く」「お気に入りのぬいぐるみと入る」など、“入るきっかけ”を習慣化。
実例:5歳のBちゃんは、テレビの途中で中断されるのが嫌で毎晩泣いていたが、「終わったらお風呂タイムね」と番組終わりを目印にすることでスムーズに。
見通しがない不安|いつ終わるのか分からない
「あとどれくらい?」「いつ終わるの?」と不安になる子は少なくありません。特に自閉スペクトラム傾向のある子どもは、終わりが見えないことに強い不安を感じます。
具体例・対応策
- お風呂ポスターの活用:「からだ → 髪 → あがる」など、手順を見える化。マグネットで“完了”を動かすのも効果的。
- 時間で区切る:砂時計(3分・5分)を用意し、「この砂が落ちたら終わりね」と安心感を持たせる。
実例:6歳のCくんは、「長いのがイヤ」と毎回泣いていましたが、お風呂の流れを描いたポスターを見せながら進めることで、落ち着いて入れるように。
トラウマ・怖い記憶|過去の出来事がブレーキに
- 転倒して頭を打った
- 顔にお湯がかかってパニックになった
- 入浴中に叱られた経験がある
こうした体験があると、子どもは“お風呂=怖い場所”として記憶しています。大人が忘れていても、子どもの心と体は覚えています。
具体例・対応策
- 無理強いしない:「顔は今日は洗わないでいいよ」「タオルでそっと拭こうね」など、本人の希望を尊重。
- 楽しい記憶の上書き:泡で遊ぶ・お気に入りのグッズを使うなど、“新しい安心”を積み重ねる。
実例:3歳のDちゃんは、顔を無理に洗われた経験でお風呂を拒否。ガーゼで口と目を覆いながら少しずつ慣らし、今では自分から「顔ぬらすよ」と言えるように。
着脱・動線のわずらわしさ|環境要因も見直しを
子どもが「お風呂イヤ」と言う背景に、実は「寒い」「面倒」「滑る」などの物理的な理由が隠れていることもあります。
具体例・対応策
- 洗面所が寒い → 小型ヒーターを設置
- 脱ぎづらい服 → 上下セパレートのパジャマに変更
- 床が冷たい・滑る → 吸着マット・防寒マットを導入
実例:我が家では冬場になるとお風呂前の拒否が増加。洗面所にミニヒーターを設置し、先に脱衣所を暖めるようにしたところ、自然と服を脱いでくれるように。
年齢別|“お風呂イヤ”の特徴と関わりのコツ
2〜3歳|感覚と拒否がダイレクトな時期
この時期はまだ言葉での説明が難しく、イヤな気持ちが「泣く・叫ぶ・逃げる」とダイレクトに表出します。
体感でイヤなこと=「お風呂=不快」に直結しやすく、感覚刺激への配慮が特に大切な時期です。
関わりのコツ
- 遊びの中に自然に入浴を組み込む
- 楽しい“お風呂グッズ”を用意して、「行きたくなるきっかけ」を作る
- 入浴は短時間&本人のペースを大切に
具体例
- 泡あそび(泡スタンプ・お風呂で絵を描ける泡など)
- ぬいぐるみと一緒に「いっしょに洗ってあげようね」ごっこ
- お風呂絵本(防水絵本・絵本風のルーティンカード)
実例: ぬいぐるみを“お風呂に連れて行く役”にしたことで、「○○ちゃんと一緒なら行く」と、子どもが自分からお風呂に向かうようになった。
4〜6歳|説明と納得がカギになる時期
「なんで入らなきゃいけないの?」「昨日も入ったのに…」といった疑問や理由づけを求める言動が増える時期です。
強制や命令ではなく、子ども自身の納得や参加意欲を高める声かけがポイントになります。
関わりのコツ
- お風呂の目的や大切さを簡単な言葉で説明
- 「役割」を与えて主体性をくすぐる
- 達成感や楽しさを目に見える形で残す
具体例
- お風呂係制度(シャワー係/泡係など)
- スタンプカードで「できた」を視覚化
- ルーティンポスターで手順と終了を明確に
実例: 「今日は泡係さんお願いしていい?」と“任される感覚”を演出することで、イヤがっていた子が張り切って入浴に向かうようになった。
小学生|プライドと恥ずかしさが出てくる時期
「面倒くさい」「裸を見られるのがイヤ」といった感情は、自我の発達や社会性が育ってきた証拠。
子ども扱いされたり、無理に誘導されることで逆に反発することもあります。
関わりのコツ
- 「早く入りなさい!」ではなく、自立を尊重した声かけ
- 入浴後のメリット(リラックス・ご褒美など)を提示
- 入浴のタイミングや方法を選ばせ、“自分で決められる”感覚を大切に
具体例
- 「今日は先にお風呂?それともごはんのあと?」と選ばせる
- 「入ったら髪乾かしながら一緒にYouTube観ようか」と、楽しいセットに
- ひとり入浴を“特別扱い”として提案(例:「お兄さんバスルーム」など)
実例: 「〇時までに入ってくれたら、あとで一緒に漫画読もうね」と伝えることで、自主的に行動できるようになった家庭も。
家庭でできる具体的な支援策10選

1. 湯おけで「やさしく」「見える」お湯かけ
シャワーの勢いが怖い・音が不快という子には、湯おけを使ったお湯かけが効果的です。
「見える安心感」があることで、パニックを防ぎやすくなります。
実践ポイント:
- 自分でお湯をすくえるようにする
- 顔を避けてゆっくりかける
- あそびの一環にする
実例: シャワーの音で泣いていた4歳の子が、自分で湯おけからお湯をかけるスタイルに変えてから、入浴を嫌がらなくなった。
2. 一緒に温度を決めて“選べる安心感”を
「お湯が熱い」「ぬるすぎて寒い」といったトラブルを防ぐには、子どもと一緒に温度を決めるのが効果的です。
実践ポイント:
- 湯温計を見せながら「今日は何度にしようか?」と相談
- 実際に手を入れて温度を確認してもらう
実例: 「選んでいいよ」と伝えたことで、入浴前に自分から「ぬるめがいい」と教えてくれるようになったケースも。
3. 洗顔を嫌がるなら「顔を覆ってOK」の工夫
顔に水がかかることに強い不安を感じる子もいます。無理に洗おうとせず、まずは“守られている感覚”を大切に。
実践ポイント:
- ガーゼで目元や口元を覆う
- 洗顔はしない日があってもOK
- 拭くだけの日をつくる
実例: 顔を覆うだけで不安が軽減し、1ヶ月後には泡で顔をなでることができるようになった事例も。
4. 固形石けんで“ぬるぬる不快感”を軽減
液体ボディソープのぬめりが苦手な子には、泡立てた固形石けんがおすすめです。
実践ポイント:
- 泡立てネットでモコモコ泡を作って渡す
- 「ふわふわしてるね」と感触に注目
実例: 固形石けんに変えただけで、毎日の「いや〜!」が激減したとの報告も。
5. お風呂スケジュールで“終わりが見える”
見通しがないと不安になる子には、「手順の見える化」がとても有効です。
実践ポイント:
- 「からだ→髪→終わり」などの順番をイラスト化
- 順にめくったり、マグネットで進行状況を示す
実例: ポスターを使ってから、自分で「次は髪だよね」と言いながら進められるようになった。
6. タイマーやカウントダウンで“見通し”を
「あとどれくらい?」の不安を減らすために、時間の可視化が役立ちます。
実践ポイント:
- キッチンタイマー・砂時計・アプリなどを活用
- 「あと3分でおしまい」など事前予告がポイント
実例: 毎日泣いていた子が、タイマー導入後はカウントダウンを一緒に見て「あと1分だね」と落ち着いて対応できるように。
7. 泡・おもちゃで“遊びに変換”する仕掛け
入浴を義務ではなく「遊び」にすることで、抵抗感がぐっと減ります。
実践ポイント:
- 泡スタンプ/色が変わるバスボム/おふろクレヨン
- 小さな水鉄砲やフィギュアを浮かべる
実例: 「今日は何色のバスボムにする?」と選ばせることで、自分からお風呂に向かうようになった子も。
8. 「今日は足だけ洗おうか」のステップ分解
すべてやらせるのではなく、「今日はこれだけ」を提案すると心理的ハードルが下がります。
実践ポイント:
- 「今日は足だけ」「体はふくだけ」など柔軟に
- 毎日じゃなくてOK、「できた経験」を積むことが大切
実例: 毎日バトルだった子が、「今日は足洗うだけでいい?」と提案されるとすんなり行動できた。
9. 役割を持たせて“主体的に参加”を促す
「自分が必要とされている」と感じることで、やる気が引き出されることもあります。
実践ポイント:
- シャワー係/バスマット係/泡立て係など名札を作っても◎
- 親子で交代制にして“選ばれている感”を演出
実例: 「今日は泡係ね」と伝えたら、自分から泡だてネットを持ってスタンバイしてくれるようになった。
10. スタンプカードで“できた”を見える化
モチベーションが上がる「できた見える化」は、習慣づくりにも有効です。
実践ポイント:
- できた日にシールやスタンプを押す
- 週1回のごほうび(小さなお菓子や特別な絵本タイムなど)を用意
実例: 入浴を嫌がっていた5歳の子が「スタンプ欲しい!」と毎晩お風呂に向かうように。
おすすめアイテム・支援グッズ一覧

アイテム | 用途 | ポイント |
---|---|---|
湯おけ・洗面器 | やさしくお湯をかける | 音も刺激もマイルド |
お風呂ポスター | 手順の視覚化 | 「終わりがわかる」安心 |
砂時計・タイマー | 見通し支援 | 子どもでも理解しやすい |
バスボム・泡グッズ | 楽しみを増やす | 遊び感覚で導入できる |
わが家の体験談|「嫌じゃなかった日」を増やした支援とは
わが家も、2歳から「お風呂イヤ!」が続きました。
シャワーの音に泣き、ぬるぬるの石けんで大パニック。
でも、ぬいぐるみを一緒に入れる遊びから始めたところ、
「◯◯ちゃんが入るなら、ぼくも入る」と言ってくれて…
そこから「今日は泡の日」「きょうは足だけの日」とゆるく続け、
いつのまにか「お風呂いこうか〜」と声をかければ自分で行くように。
“完璧に入れる日”より、“嫌じゃなかった日”が増えたことが、何より嬉しかったです。
よくある質問(Q&A)
Q. 毎日お風呂に入れなくても大丈夫?
大丈夫です。清拭(タオルで拭く)や足湯など、できる形で清潔を保てばOKです。
Q. 何歳くらいまで続くの?
個人差はありますが、2〜6歳がピーク。
その後は本人の理解や習慣化で徐々に落ち着くことが多いです。
Q. 兄弟一緒だと余計にパニックに…
兄弟別々に入浴時間を設ける/どちらかが“見守り係”になるなどの工夫が有効です。
まとめ|お風呂に入ることより、“安心して過ごせる時間”を大切に
完璧に入浴できる日も、できない日もあります。
それでも、「今日はちょっと嫌じゃなかった」そんな小さな変化が、
子どもの心に安心感を育てていきます。
“嫌がる子をなんとかしよう”ではなく、
“どんな風に支えればこの子は安心できるかな”と問い直すことで、
親子の関係も、毎日の入浴も、少しずつ変わっていきます。
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